その日、楡は部活に来なかった。

依頼も来なかったのだが、それはほぼいつもの事なので、首を傾げるようなメンバーは居ない。


しかし、楡が来ないというのは珍しい事だ。

大体は会議が怠いとかで、部室に来て惰眠を貪るか、煙草を吸うかのどちらかなのだが、今日はどちらでもなかった。


「…先生が来ないなんて、珍しいですね」


五月女は窓を見ながら呟く。

雨は未だ止みそうに無く、窓を乾いた音を立てて雨粒がぶつかっている。


「楡先生って、雨の日はなんか変よね。テンションが高いというか、何というか…」

「そうですかね」


明衣は本郷の呟きを遮った。


「どちらかというと、雨の日は気分が乗ってない気がします。なんか、必死に喋る事に集中して、……まるで何かを忘れたいみたいだった」

「……ふーん……」


明衣の言い方は何処か真剣で、本郷も少し戸惑った。