♪『固まった昨日嘆くよりも
明日を自分で造り出そうよ
まだ何も始まっちゃ居ない
完成した作品じゃなくて良い
あたしはあたしのままで』♪


城ヶ島は、自分で作った曲を自分で歌いながら、何だか泣きそうになっていた。


逃げることしか頭に無くて、何か壁に当たるたびに自分を正当化し、最もらしい理由を付けて他の道を探した。


無限に広がる自分の道の中で、振り出しに戻るだけの無意味な道に何度も進んでいた。


♪『背中向けて立ってたんだ
あたしが向いてたのは常に後ろで
あたしの目の前は過去の失敗ばっか』♪


二番に入った辺りからは、さっきまでは聞こえてこなかった城ヶ島の名前が時々聞こえてくる。


♪『双六でサイコロ振ったら
スタートに戻るばっか止まって
もう投げ出して
二度とやるかって
二本の足で立ち上がれ』♪


彼女の等身大のリアルな歌詞は、生徒の心に響いていた。


「あたし、こーゆーのわかる」

「あたしも。何だかんだ言って、楽な方が良いからって後ろ向いちゃうよね」


素人には興味が無いと思っていた軽音部も、すっかりステージを凝視していた。