控えめにマイクを握り、城ヶ島は後ろに立っているメンバーを見た。
皆優しい眼差しを彼女に向けている。
「…行くよ」
「うん」
本郷が小さくそう言うと、城ヶ島はコクンと頷いた。
その様子を確認した明衣も、五月女も、遅れて頷く。
スティックを持った楡の手が振り下ろされた。
巧みに連符を叩き、会場からは歓声が飛び出す。
「えっ、沚先生ってドラムできんのー?」
「カッコイーッ!!」
ソロに続いてギターとベースが入り、音に厚みが増す。
「明衣ー!」
「蘭ちゃん!」
「良祐ー!」
名前を呼ばれて少し照れた五月女が、はにかんだように笑う。
それを見た明衣が目で「何ニヤケてんだよ」と訴える。
一旦楽器が落ち着き、城ヶ島はマイクに口を近付けて息を深く吸い込んだ。