明衣は続ける。
「依頼してきたから、あたし達はこうして一緒に頑張ってきた。けど、当の本人にやる気が無いんじゃ、何も始まらない。
蘭先輩が指痛くなるくらいソロの練習したって、五月女がパソコンそっちのけでベースやったって、楡が徹夜でドラムやったって、アイツが逃げてるなら、あたしは応援する気なんて無い」
明衣は真っすぐに本郷を見た。
「あたしたちの仕事は、アイツの尻拭いをすることじゃない。アイツと一緒にステージに立って、優勝して、アイツを学校の皆に認めてもらうための手伝いをすること。
だから……」
その時、控え室がノックされた。
「もうすぐ本番です」
スタッフが小声で告げる。
メンバーは楽器を持った。
「だから………」
明衣は言った。
「アイツが来ないなら、弾かない」