五月女が困ったようにおろおろしながら明衣を宥めようとするが、明衣は鼻を鳴らして彼から麦茶のボトルを奪った。
「明衣ちゃん、それは言い過ぎなんじゃ……それに、先輩にため口はマズイでしょ」
「はぁ?言い出しっぺのくせにだらしないから喝入れてやったのよ。こういうのは先輩後輩関係ないの。こっちは初心者だってのに無茶やらせて、前日に失敗が怖いですって?甘ったれんのもいい加減にしてよ!」
バン!と机を叩く。
城ヶ島は肩を震わせ、恐々と明衣を見た。
「失敗が怖いとか言うなら最初からやらなきゃ良い!蘭先輩やうちらに無理言って………何か萎えたわ。勝手にやれば?もう帰る」
明衣は冷ややかな眼差しを城ヶ島に向けると、乱暴にカバンとギターを持ち上げて部室を出ていってしまった。
本郷は心配そうに乱暴に閉められた扉の先を、早足で歩いているであろう、明衣の姿を想像しながら俯いた。
城ヶ島は何も言わずに俯き、麦茶に映る自分の情けない顔を見ていた。