数日が経ち、もうバンドコンテスト迄残すところ二週間となったころ。
日頃の頑張りが有ってなのか、細かいところは目を瞑るとして、何とか一通り通せるようにはなっていた。
「サビの前のベースソロさ、もう少し歯切れ良くね」
「はい!」
「基本的にドラムでテンポ決まりますから、先生自身がメトロノームになったつもりで」
「あー……」
「セカンドギターはストロークが乱暴にならないように。クッて入るところ、もっと意識して」
「はーい」
本郷の指導が部室に響く。
メンバーはそれぞれ言われたことを楽譜に書き込みながら、真剣に練習する。
暗譜もしなければならない。
本番は、楽譜など見れないから。
「じゃあ、もう一回最初から!今注意されたことを意識して、小説番号Fまで!」
本郷の言葉で、楡がスティックでカウントを取り、再び合奏が始まった。