本郷は一歩も引くつもりはなかった。
元来負けず嫌いな彼女は、ここで言い負かされ、帰ってしまえば負けになると、勝手に楡を敵に仕立て上げていた。
それに気付かない楡は、願書を摘み上げると本郷の目の前にちらつかせた。
本郷はそれを叩き伏せ、強い瞳で楡を見る。
「私は引くつもりはありません!先生が顧問を引き受けてくださるまで」
本郷の言葉と姿勢に、楡は僅かながら眉を寄せる。
「俺の話聞いてた?マッハで受け流した?」
「私の最強のバリアで跳ね返しました」
「届いてすらなかったのか…」
楡は埒があかないなと思いながら、願書の文字を見た。
“全部請け負う部活動・auc”
ここで、更に楡は首を傾げる。
「……何部?これ」
「aucは、学校の皆さんの悩みを聞いたり、お手伝いをしたり、依頼には忠実にお答えする部活動です!」
「………ボランティア部じゃなくて?」
「違います!全部請け負う部活動です!」
「………………」
楡は彼女の目を見た。
その目は、少しも揺らぐことなく楡を見据えている。