「”どうしても、結婚したい人ができ
 た”って。

 自分が猫だなんて知られたら、この
 結婚はダメになるかもしれない。

 だから、隠し通す為にも、お前とは
 もう会わないってさ」


その口調は、決して私の父親を責める
ようなものではなかった。

もし、この幽霊の言う事が事実ならば、
すごく悲しい現実のように思う。

だって彼は何年も”家族”に会う事なく、
一人で暮らしてきたのだから。


「寂しかったね、ね。

 ”家族”と会えなくて」


気がつけば、私の口は言葉を発していた。

その言葉に、一瞬彼は目を丸くする。