毎日のように、マレッタ様はこの城を訪れる。
前までは、レオ様に好意を寄せているからだと思っていた。
―――けれど、今は。
レオ様とメイ様は既に婚約している。
つまり、マレッタ様がこの城に来る理由は、ないということになる。
…逆に、来づらくなるのでは。
女性のことはよくわからない。
コツリ、と靴音が廊下に響き、私は視線を移した。
闇に映える金髪に、真紅の瞳を愉しげに細めているのは、
「…レオ様」
この魔界の―――魔王となるお方。
レオ様は腕を組み、壁に寄りかかったまま、口を開いた。
「全く、困ったもんだよなぁ?」
「…はい?」
「マレッタだよ」
私の間抜けな返事に、レオ様は苦笑した。
その表情を、私は不思議そうに眺める。
「…マレッタ様が…どうかなさったのですか?」
瞬間、レオ様は表情を固くした。