あの館の前です。
「ちょっとだけ、入ってみようかな…」
周りには人影がありません。
いつも入るのを止めてくれる友達も。
かの子は興味深々の思いを胸に、館のドアを開けました。
キイィィイィ…
まるでホラー映画のようなドアのきしみ。
館の中は霧が立ち込めていて、2、3歩先ぐらいまでしか前が見えません。
かの子は少し怖くなりましたが、それでも勇気を出して一歩二歩と館の中へ足を踏み入れました。
キイィィィィイィ…
バタン!
ドアがしまる音!
かの子はビクッとして後ろを振り返りましたが、もう霧でドアが見えません。
それどころか、とうとう周りが何も見えなくなってしまっていました。
出口を見つけようと走り出しましたが、走っても走っても霧ばかり。
かの子は疲れて座り込んでしまいました。
今にも泣き出したい気持ちになってきたその時、
「おや、こんなところでどうしました、お嬢さん?」
かの子が振り返ると、そこに男の人が立っていました。