「俺は無意識のうちに家に帰り、
台所の包丁を手にしていた。
そして、親父のところへ戻ろうとした時、
目の前に直哉兄が立っていたんです。

直哉兄は包丁を持った手を
そっと握って、俺のこう言った。


『遊びに行かないか?』と・・・


俺はその一言で我に返った。


頭に血が上り、意識が遠のくほどの
怒りが体からこみ上げていた俺は
自分でも何をしていたのか
よく覚えてないけど、

直哉兄のやさしい笑顔は、
今でもはっきりと憶えてます。

その笑顔を見て俺は思わず
泣き出してしまったんです。


そんな俺を、直哉兄は
そっと抱きしめてくれた。


俺は声を上げて泣いた・・・。」