授業開始のチャイムで、

僕はふと我に返った。



あわてて教室へ向かった。




「おお、秋。どこ行ってたんだよ?」




明るく話しかけてくれた功也を、

無視してしまった。



僕はかばんを手にすると、

そのまま菜々の家をめがけて走り出した。



「おいっ!!秋!!」



功也の声は廊下まで聞こえた。



「帰る」

その一言くらい言えばよかったと思うが、

そのときの僕にはそれを言う余裕さえもなかった。