相川は私を部屋に入れた。
さっきまで人がいたみたいで、テーブルにはマグカップが置かれていた。
「誰か…来たの?」
「あぁ。海乃がな。」
「あまの…??」
って誰だっけ。
思い出せない。
そんな私を見た相川の顔に驚愕の表情がうかんだ。
私に近寄って、私の肩を掴む。
「おい、海乃だぜ?海乃 翔!お前の、彼氏だろ!?」
「なに寝ぼけてるの。そんなわけない。」
バカも休み休み言って欲しい。
私に恋人なんているわけない。
そもそも私が他人を好きになるわけがない。
「おい、ふざけんなよ。何言ってんだ!弱気になってんのか?海乃がお前を見捨てるわけないだろ!」
相川は必死で私を揺さぶる。
相川自身もかなり錯乱しているようだ。
だから私は必死で記憶の糸を手繰った。
海乃…海乃…海乃 翔…
それでもやっぱり、分からない。
「真希……」
そんな様子の私を見て、相川はとても悲しい声で私の名前を呼んだ。