辛いからこそ逃げ出したい。
そばに、いられない。
なにも出来ない現実は、とてもとても辛くて、痛いから。
「神様は何もしてくれない。ただ見てるだけだ。」
俺は泣いている海乃の横でコーヒーを飲みながら言った。
「でもそこで海乃に逃げられたら、残った真希に残されるのは、真っ暗な視界半分の世界だけだ。
今日が終わる感覚も、明日が来るという感覚も感じない。
心を閉ざした、芹沢 真希に戻るだけ。」
鉄の仮面を着けて、誰に理解を求める訳でもなくただそこに在り続けるだけの少女。
俺、馬鹿なのかな。
戻るのなら、俺にもチャンスがあるって事だから、喜ぶべきなのに、喜べない。
あきらめなくてすむかもしれないのに、せっかくあきらめかけてるのにっていう俺がいる。
「せっかく俺が諦めてやったんだ。なぁ?海乃、てめぇ男だっていうなら根性見せろ。真希は強敵だぜ?なにしろ今まで最低4人の男を振り回してんだから。」
俺はそう言って海乃の前にもコーヒーを出した。
海乃は黙ってそれを受け取って、角砂糖を5コもどばどば入れた。
うげっ……。
さすが甘党。