優しくつかまれたかと思うと、強く引かれて、わたしはまたベッドの上に逆戻りした。
正面でタツル君はにやりと笑った。

「30にもなって、何言ってんの?
昨夜すみずみまで見て触って味わったのに」

顔から火を噴いてもおかしくはないほど、わたしは顔面が一気に熱くなるのを感じた。
目をかたくつむって、両手で耳を塞いで首を振る。

「空子さん」

静かに名前を呼んで、彼は優しく耳から手を外した。
唇が耳たぶに触れるくらい近くで、彼があることを口にした。
わたしはそれを聞いて目を見開く。彼は楽しそうに笑っている。

わたしは彼の裸の胸を幾度か拳で叩いた。彼は余裕たっぷりに笑っているだけ。

叩くのに飽きて、わたしは拳をシーツの上に置いた。
にやにや笑う彼を見つめていると、何だかだんだん悔しくなってきた。

そして、えいっと叫んで、思い切ってその胸に飛び込んだ。


゙俺、もし今すぐ死ぬんだったら、空子さんの中で死にたい゙

さっき耳元で告げられた言葉を思い出して、また顔が熱くなってくる。

ぎゅう、と温もりを確かめるように腕に力を入れる。
ばか、ときつく抱き締めながら言うと、彼は嬉しそうに笑った。