「これ、何」

興味なさそうな声で彼が訊いた。
わたしの両手首を片手でつかみ直し、頭上に押さえつけた。
空いた方の手で、わたしの上半身を指差す。

わたしのからだには、ところどころ赤い印のようなものがついている。
首筋に、鎖骨に、胸に、下腹部に。至るところに、赤い花を咲かせるように。

わたしは口ごもりながらこたえた。

「内出血、です」
「誰がやった?」

どうしてそんなことを訊くの、と叫びたかった。

明るいところでじっと裸を見つめられて、恥ずかしいことを訊かれて、わたしは何だか泣きたい気分になってきた。
それと同時に、腹が立ってきた。

なんてひどい男だろうと感じた。

分かり切っていることを訊ねて、わたしにそれを言わせて、優越感に浸ろうとしているのだろうか。

やっぱり、男は女を従わせたがるんだ。力でものを言わせて、辱めを受けさせて、優位に立とうとするんだ。

「タツル君に決まってるじゃない」

叫ぶように言って、彼を怒りと羞恥で涙目になりながらにらみつけた。

「そうだよ」

ひょうひょうとした表情で彼はこたえた。