不機嫌そうな色を含んだ瞳で、彼はわたしを凝視している。
わたしは目が逸らせられない。
彼が、「逸らすんじゃねぇよ」とオーラで脅しているから。

「おはよう、くうこさん」

わたしは、へぇっ、とすっとんきょうな声を上げてしまった。
彼は、冷たい瞳のまま、唇できれいな曲線を描いた。

「お早う、空子さん」

よく聞こえるように、ゆっくと、はっきりと彼は言った。

わたしはあわてて言葉を返す。

「おはよう、タツル君」

笑顔を意識していつも通りに返したはずなのに、彼はまた不機嫌そうにわたしを見つめた。
わたしの二倍はある大きな手で、胸を隠すわたしの手をつかんだ。
そして、手首を強い力で持って、シーツにいとも簡単に押しつけた。

わたしは抵抗してみたけど、骨ばった手はびくともしなかった。

彼は冷たい光を宿す焦げ茶色の瞳で、わたしの上半身をじっと見つめていた。

短く、やだ、と叫んでも、彼は手を離さなかった。
わたしはその視線から逃げたくて、顔を背けた。