心の底から、この女を。

この女を嫌っていたはずなのに、と思っていた。

彼女の小さくて柔らかい手を包みながら、感じていたのは、この人間に出会うまで知らなかったものだ。

居心地が悪いような、背中で蟻が這っているようなむず痒さにも似ている。

不快感も確かに感じているはずなのに、それを覆すものに胸の奥から手指まで支配されている。


この女がいるからこのような感情を持てたのだ。


もう一人の僕が悟りを開いたように告げる。

そいつの胸倉を引っ掴みながら、そんなの知ってんだよ、と凄む。

てめぇになんか言われなくても知ってんだよ、と。

「明日、一緒に出しに行こう」

嬉しそうに、花開くときのように彼女は微笑む。

僕は頷きながら、逃がしゃしねぇよ、ともう一人の自分に言った。