翌日、念のため10枚用紙を貰ってきた。

対応した職員が、あからさまに嫌そうにしていた。
友人の分も頼まれてしまって、と適当なことを言い、無理矢理掻っ払ってきた。

皮肉なことに、一枚目できちんと書けてしまった。

彼女が握るボールペンを、僕が上から握って書いたせいもあるが。

一つのボールペンを二人で握っているとき、妙な考えが頭に浮かんでいた。

ウェディングケーキを、新郎新婦で一つのナイフをともに握りながら切っている映像が頭をよぎった。

何か、これもそれみたいだな。

と思って薄く笑っている自分に気が付いた。

笑っている自分が、この上なく気色悪かった。
信じたくなかった。
自分がこんな薄笑いを浮かべるような男ということを、認めたくなかった。

「なんか、ケーキ入刀みたいだね」

えへへ、と空子さんが照れたみたいに笑った。

この駒鼠女と同じことを考えていた自分に、愕然とする。

心の底から、嫌だと思う。