「あ~っと、『ご飯にする?お風呂にする?それとも…』っていうやつ、やった方が良かった?
それなら……」
今からやるけど、という俺の言葉は、賢杜の胸に消えた。
視界から全てが消え失せ、そのかわりにワイシャツからのぬくもりが顔に触れる。
抱き締められたのだとわかるまで、ゆうに数十秒かかった。
「けん……と……?」
「そんな泣きそうな顔で1日いたのか?」
言葉が出なかった。
泣きそうな顔に心当たりはなかった。
しかし、今日1日考えていたことを思えば、そんな顔になってしまっていたのかもしれない。
後悔、悔やみ、懺悔。
そんなものが心を支配したけれど、
言えるはずもなくて。
このまま、ずっと、
賢杜に『いらない』と言われるまで、
一緒にいたらそれも許して貰えるかななんて、
そんな自分勝手なことを考えていた。