人に恨まれる覚悟は、俺には出来ていなかった。


いや、見も知らぬ他人になら、どう思われても構わない。



そうじゃなければ、好きでもないやつに体を許すなんて、出来るわけがない。



だから普通のサラリーマンである男を落とすなんて馬鹿馬鹿しい話にも乗ったわけだし、

実際こんなところまで転がりこんだわけで。



でも今は、賢杜を知ってしまった今は、


賢杜が人生のレールから転落するのを見たくなかった。


俺が賢杜に近付いた理由を知られたくないと思った。



肌を重ねたくらいで情が移ったわけではないと思う。


それなら俺は今までの男たちの人生を考えるはずだし、

だったら今ここにいないはずだ。



俺は、いったいどうしてしまったのだろう。


そして。

「俺は、いったいどうすればいい……？」


つむった目は重く歪んでいた。