その人物が見えた瞬間、俺は彼女に視線を戻さぬまま、 「あ~、やっぱいいです。また来ます」 と背を向けて出口へと足を早めた。 「あ、お客様……」 という彼女の声が聞こえたが、その頃には後ろで自動ドアの閉まる音がしていた。 一瞬だったから、気付かれてはいないと思う。 あれは── 俺に声をかけてきた、 賢杜を1ヶ月で落とせと言ってきた、 あの男、だった──