横開きの扉を開け、電気を点ける。蛍光灯の機械的な光が即座に照らし、「再会」の暖かな白熱灯が思い出されて、わたしは幽かに恋しくなって(何時も途中で記憶がなくなるから、実は、悔しい)、もちろんそれは無理な相談だった。そう、白熱灯は温暖化防止のために製造中止、とこの前ニュースで偶然見ており、まさに泡沫の夢、わたしはその泡を払って、ベランダ沿いにある大型のパソコンデスク、その横にあるスイッチを入れる。

 そして、すぐさまキッチンに行き珈琲を二人分容れて戻ってくると、パソコンは準備満タンと言いたげに照らし、それとは真逆、陵市は椅子にも座らず、この前奮発して買ったソファーにも座らず、三角座りをしつつも、……あれ? さも憎そうにパソコンを見上げていた。
「陵市? どうしたの?」わたしが顔を覗きこむと、「有紗、有紗は解ってないんだ。この辛さを」と呟く陵市、「陵市? 昨日もしたでしょ? お猿さんになっちゃうよ?」と云うわたしの的を得た発言には、顔だけを赤くしてノーコメント、もしかしたら、本当にお猿さんなのかも知れない。

「ね、陵市?」わたしは珈琲をパソコンデスクに一先ず置いて言った。