流石に恥ずかしくなったのだろう、「いや、これは……」とさっきの能弁が嘘のよう、見る見るうちに顔が赤く染まり、尚且つ両手で乳房を掴んだまま離そうとはしない。

「……うん。良いよ」

 わたしも流石にかわいそうになって、頭をゆっくり撫でる。繊細な、絹糸のような髪質。わたしは無くならなければ良いな、と思った。

「え、うん、よし。じゃあ……」と言いながら、陵市はカチャカチャとベルトを外し、「あ、」思い出したように続ける。

「そう言えば有紗、ネタを思いついたんだ。そう、帰り道。やったよ。やはり有紗の言う通りだった。俺はまだまだやれる。みんな、有紗のおかげ、有難う」

 確かにその言葉は嬉しかった。けれど、やっぱり陵市は何処か抜けてる、と言わざるを得ない。だってそんな事を言ったら、「え! どんな?」、とわたしがすぐさま訊くのは明白の事実だし、「いや、そこまで大した話じゃ」、と俄かに目線を逸らす陵市に、「よしっ! じゃあ今から書こう?」と急かすのもまた必然、わたしはすっと寝たまま、横に脱ぎ捨ててあったブラを取って、もぞもぞと着用した。

「あ……」

 間一髪間に合って(思った以上に手間取ったみたい)陵市を見たところ、その手が宙に浮き、行き場を無くしているようだったので、「頑張ろ、陵市」わたしは握手するように掴み、そのまま上半身を起こす。

「ちょっ」

 更に、あまりに陵市が情けない格好だったものだから、ずり落ちたジーンズを引っ掛かりながらも履かせてあげ、「よしっ」わたしはするっと陵市の脚の間から同じそれを脱走、「有紗? これは?」と指差す場所をちらっと見た後、「あとで、ね?」と軽く目配せし、「パソコン起動させてくるね!」わたしは電気の点いていない隣の書斎へ歩いていった。下は脱がされていなかったので、スカートが翻る。歩きながら、カラータイツの御陰かもしれないな、と思う。