「こんな事をするのは、止めなさい」

俺は、柏木の腕を払った。

「社長。私、あなたの事が・・・」

「私は、君の事など何とも思わない!!」

俺が部屋を出ると柏木は、後を追ってきた。

ピタリと横を歩く。

乗り込んだエレベーターでも、ネトッとした目は、変わらなかった。

そんな柏木を無視し俺は、裏口から車に向かった。

「社長!」

警備員が俺を、呼び止めた。

「コレ、お預かり物です」


仕事関係の書類だろうか?

こんな遅くまで仕事熱心なヤツがいるものだ!


「明日にでも、部屋に回しておいてくれ!」

俺は、廊下を歩き出した。

「イヤ~良いんですか?コレ・・・」

警備員は、そう言いながら部屋から出てきた。

「急ぎなのか?」

「だと・・・思うのですが・・・」

手に収まるほどの箱を持ち近付いて、俺に渡した。


「これは、いつ!?」

俺は、コレを預けたヤツの心当たりがある。

「つい先ほどなんですが―――」

「で!彼女は?」

「はい・・・上の階に上がったかと思ったら、すぐに降りてこられて・・・。
社長に渡すようにと私が、預かりまして。
何だか嬉しそうに『友達と、今から遊びに行く事になったから~』のような風な事を・・・言っていました」

「そう・・・か」

「はい!」

俺は、渡された箱をまじまじと見つめた。


「まっ!可愛い箱!!」

横の柏木が、それを取り上げ、開けた。

「あら~タルト。きっと手作りね!私も学生時代作った事があるもの!!」

俺は、柏木から箱を奪い返した。

「可愛いわね~そんなことするなんて・・・」

柏木は、鼻で笑って言った。