私が大水さんの仕事場『ノエルデザイン』の前に着いた時には、一階の受付が青白く常夜灯に照らされていた。
私は、裏口に回った。
そーッと顔を覗かせて辺りを窺う。
「ちょっと君!!」
完全に不審者の私は、恐る恐る振り返った。
「あ~君は、いつかの!」
私もこの人には、見覚えがある。
懐中電灯を片手に、カツカツと音を響かせて警備員のおじさんが近付いてくる。
その人は、私の事を覚えてくれていたらしく「社長なら、まだ裏に車があるから上に居るんじゃないかな?」監視モニターに移る様子を指差しながら、ドシンとパイプ椅子に座った。
私は、逸る気持ちを抑えながらおじさんに頭を下げた。
『付き合ってみる?』そう言われたあの時の大水さんの顔、カッコ良かったナ~。
思い出しながら、ニヤケ顔、浮かれてスキップしてた私の足は、最上階のフロアーにあった。
突然来ちゃったけど・・・喜んでくれるかな~。
『コレ、作ったの!』なんて、渡したら・・・喜んでくれるかな~。
そしたら・・・また、あの部屋であの時のような顔、してくれるかな~。
でもそんな私が、社長室の前で息を飲んだ。
少し開いた扉から見えたもの、それは・・・・・。