車は、住宅街を走る。
すると、「この辺で・・・ありがとうございました」彼女は、そう言った。
彼女の祖母(取引相手の社長)を、何度か送った事があるから自宅の場所は、解る。
が、ココで良いのか?
まだ、ずいぶん歩くことになるが・・・。
まあ、彼女がそう言うのだからと、俺は車を止めた。
「今日は、ありがとうございました。私、早とちりしちゃって余計な事までしゃべっちゃって、家まで送って頂いて・・・スミマセン」
しおらしく、そう言う彼女。
今日の事を反省しているのか?
俺が知ってる女達は、こうじゃなかった・・・かな。
「私こそ。紹介された相手が、私みたいな者でスミマセンでした」
俺は、俺を演じてそう言った。
俺は、俯いた彼女の頭を撫でて
「今日の事は、お互い忘れましょう。社長に何か聞かれたら『こんな年寄りは、無理』とでも言って置いてください」
とっさにそう出た言葉だった。
自分では、年寄りなんて思ってはいないが彼女達の年代からするとそうなるだろう。
彼女は、顔を真っ赤にした。
俺は、何か彼女の顔を真っ赤のするような事したか?!
彼女は、助手席の扉を開けて勢い良く出た。
そして、「大水さんの事年寄りだなんて私思ってませんから!!」彼女は、告げると扉をバタッと閉めて駆け出した。