俺は、懐かしい気持ちを感じながら車を走らせていた。
まだ母さんが生きていた頃、俺もあんなふうに叱られたっけ・・・。
どうして遅く帰ったのかは、忘れたが家に入ると血相を変えて母さんが玄関に駆け寄ってきた。
きっとダチと、つるんで街をブラブラしていたんだろう。
俺が家に入るとその後を追うようにしながら小言を、言われた。
どんな事を言われたのかすら覚えては、いない。
その頃の俺は、ちょっと荒れてて親のいう事など聞く耳を持っていなかったんだからな・・・。
でも、俺が自分の部屋に入る間際に「祐に何かあったんじゃないかって、本当に、心配したんだからね」
そんな母さんの声が、耳に入った。
ウザイ・・・・。
その時の俺は、そんな風にしか感じられなかった。
ろくに顔を見もせず自分の部屋にこもった。
それから、数日後母さんは入院した。
俺が病院に行った時には、すでに点滴に酸素マスクとベットに青白い顔をした母さんがそこに居た。
きっと、俺の帰りを心配していた時も母さんの具合は、悪かったんだろう。
小さな骨壷に入った母さんを抱えて、初めてそう思った。
今になって思い返せば、『後悔』と言う文字だけが俺の中に何度となく浮かぶ。
母さんをキライだったわけじゃない。
ただ、その頃の俺は、何に対しても反抗的で自分がすべてで、人の気持ちも考えられないような、子供だった。
凛には、そんな思い出は、残してほしくない・・・。
俺は、そんな事を思い家路に向かった。