「ホントだ。門を開くと建物が見えるのか……」


 緑の芝生の上に白い平屋建てのような建物が建つ。これがサイエンスカンパニーの研究所。


 二人はすぐに正面にある入口から入る。


 中は暗く、機械から発する光だけで概要は分かるくらい明るい。たくさんの機械が壁を覆い、よけいに狭苦しさを感じる。
麻耶がパソコンの画面を見て下に続く階段を見つける。悠介を先頭にして下に降りる。


「うわっ!誰だ!お前――」


白衣を着た男が叫んですぐさま悠介が胸を一突き。言葉の代わりに血を吐いて倒れる。ナイフを抜くとそこから血が噴水のように流れすぐに止まった。それを悠介はじっと見ていた。




「待っていたぞ」


地下三階の奥で鉄斎はいた。白衣を着ているが中は相変わらず和服だ。鉄斎の後ろの画面には『血の起爆』のデータを表示している。


「どうする?お前とデータを交換か。わしを倒すか……」


「これか?」


悠介がおもむろにCDディスクを取り出す。玲菜が持ち出したデータだ。それを鉄斎にトスをして渡す。


 玲菜は呆気に取られていた。一番鉄斎を憎んでいるだろう人間が素直にデータを渡した。つまり悠介は聖側に寝返ること意味する。


 麻耶が何かを言おうとしたとき鉄斎は悠介に近寄る。


「おい!これは何にも入っておらん……」


 そこまで言いかけて鉄斎は血を吐いた。背中を深々とナイフが刺さる。無表情の悠介はそれを抜いて鉄斎の体を正面を向かせ、胸にも刺す。柄まで入り込むくらいに深く刺した。返り血が飛ぶが特に表情を変えずにすぐに引き抜き、ゴミを捨てるように投げた。


「麻耶。データの回収を」


 ワンテンポ遅れて返事をする麻耶。悠介は何を思って手をかけたのだろうか。
 それを知るのは悠介だけである。