画面には都市部のどこかのスクランブル交差点が映し出されている。その中央が焼けて黒い煙を吐き出している。周りには焼け倒れてうずくまっている人が大勢いる。救急隊が怪我人の対応に追われている。しかし、倒れている人の方が多く対応は間に合っていない。


『――繰り返してお伝えします。今日午後六時丁度(ちょうど)。渋谷のスクランブル交差点で突如(とつじょ)爆発が起きました。死傷者は推定で五百人は――』


 鉄斎だ。これは鉄斎が慎次に宛てたメッセージに違いない。『わしらを甘く見るな。次は本気でやる』といった言葉が聞こえてきそうだ。


『――尚、政府はこの爆破に対して海外のテロ組織が動いた。その前触(まえぶ)れではないかと発表しています。』


 周囲では他人同士でも不安から話し声が聞こえる。『怖くなった』『こっちはあそこほど都会じゃないから、関係ないか』などまるで他人事のようだった。そうじゃない。三日後の正午にはここもあのブラウン管の向こうと同じような惨状になるはずだ。


「ねえ!あれって――」


「分かってるわ。鉄斎の仕業でしょう。――ようやく動き出したみたいね」


 玲菜がそう言うと麻耶も頷く。


「ついにあっちの攻撃の準備が出来たってわけね。慎次。今のは私たちに向けてのメッセージよ。鉄斎が近いうちあれと同じものを全国で爆破させてくるわ。今のうちに鉄斎を倒して、爆破起動装置みたいなものを止めないと!」


 結局麻耶たちは全て知っていたのだ。だから鉄斎は玲菜の名前を出したのか。これは慎次と悠介と鉄斎だけの問題と思っていたのに。
結局自分はカードを切るプレイヤーではなく、一枚のカードに過ぎなかったのか。プレイヤーは鉄斎と玲菜。


 しかし、プレイヤーが玲菜ならまだ鉄斎を引き合いの場に持ってこれるかもしれない。彼女は自分と違って、ものの見方から知識の量まで自分より劣っているものはない。強いて勝るといえば、腕っ節(うでぷし)くらいか。


 とにかく。味方がいることだけでも十分に心強い。後は家で対策を練るだけか。


 慎次を乗せた玲菜の車は法定速度をはるかにオーバーして新城家に向かった。