悠介と鉄斎の距離は手を伸ばせば届くほどまでの距離だった。悠介の顔は目の色を失った人形のようだった。


 その人形に鉄斎は優しく語りかける。


「三日やる。お前がどっちにつくか考えろ。聖かそれとも新城か。三日後の正午がタイムリミットだ」


――新城?どういうことだ?そしてなぜ三日後だ?


「新城は我々から聖の貴重な情報を持ち出したのだよ。だから聖は新城を潰す。玲菜に伝えとけ。――今度の舞台は日本だ。三日後の午後十二時一分に一斉にテロが始まる。と」


 ――テロだって!?


「わしの血の技術を見ただろう?今もこうして悠介を操っている。もしこの血の情報を爆弾の起爆に使ったら?爆薬は自分の体だったら?それが『血の起爆』だ。そして人間に限らず動物に聖の血を混入させれば、被害がどうなるかお前でも分かるだろう?日本全国が混乱し、パニックに陥るだろう」


 ――お前は何が目的なんだ?


「分からん。わしの目的は自分が王になることでも、巨万の富を得ることでもない。ただ一科学者として気になるとは思わんかね?この壮大な実験の結果が!科学者に限らず学者なら自分の考えた理論が正しいか気になるだろう?わしのはたまたま人命がどれほど消えるかが問題なんだ。――理論はすでに完成している。後はわしの意志一つで『血の起爆』を組み込まれた人間は爆発する。そんな因子(いんし)を組み込んだ人間は今では日本全国に散らばっておる」