「わしの名か?そう言えば言ってなかったな。私の名前は聖鉄斎。ここの会長だ」


「ふざけるな!お前みたいなやつが俺の……。聖の人間のはずがない!」


「おもしろいやつだ。自分の正体が知りたいって言っておきながら、いざ自分の正体を知って『そんなはずがない?』笑わせてくれる。お前を不幸にした張本人が言っているんだ。少しは信頼したらどうだ?」


「誰がお前の事なんて!」


「以外にも頑固な奴だな。では少し大人しくしてもらうかな」


 鉄斎が人差し指で悠介を招く。悠介はゆっくりと鉄斎に向かって歩く。


 ――ちょっと!どうしたの!?何であいつの元に向かう!?


 悠介は何も答えない。慎次の意識体が体に入っている悠介をどかそうとしているが出て行かない。


「無駄だよ。慎次。悠介に流れているのは聖の血。それもお前よりもずっと濃い。わしはその血で操っている。聖の血が濃いほどわたしのコントロールをしやすい。感情的になって慎次を追い出したのがこっちにとっては好都合でな。――それとおまえの問いに答えてやろう」


 鉄斎は一呼吸置いて話し出す。


「プロジェクトは『電気信号による二重人格者の覚醒』だ。虐待などの強度のストレスを持った者に送りつけ電気で二重人格を作り出す。そしてもう一つ『血の移行』だ。――流れた電気信号から別の人格と血を脳に送り血の構成を変える。そうすることによりその人間のもう一つの人格には聖の血が流れるようになる。これでその人間は操りたいときに操れる。もう一つの人格を使ってね。しかし、この悠介には若干無理があるな。やはり聖の人間に使うと幾分(いくぶん)操作力が鈍い。これはほぼ確定だな」