「あの。僕、この前小包を貰ったんです。サイエンスカンパニーから」


 老人の顔が強張(こわば)ったことを慎次は知らずそのまま続ける。


「それでこの黒いダーツを貰ったんですが、『プロジェクト』とは何ですか?」


「……そうか坊主は新沼慎次か」


 慎次は驚いた。この老人には一度も名前を話していないはず。なぜ知っている?


「ではこちらも答えて頂こう。『もう一人の人格』は姿を現したか?」


「ああ!これだ。これがお前の言うもう一人の人格だ」


 老人の問いに答えたのはもう一人の人格。それを見て老人は笑う。


「ようやく姿を現したか!慎次!いや……」


 老人は笑いを抑え急に低い声でゆっくり話す。


「聖悠(ゆう)介(すけ)」


 ?


 顔を曇らす慎次。老人は少しの間慎次たちにこたえる猶予を与えたが、


「分からぬか。いや分かるはずがないか。お前は本来聖の人間だった。しかし、どうしてお前の名が新沼か分かるか?」


 そこでも一呼吸置く。


「それはお前が聖の人間を名乗るのに適さなかったからだ」


「どういうことだ?」


「ここまで言ってまだわからぬか!では答えを教えよう。生まれて少し経って分かった。お前にはお前の持っている聖の血が薄すぎた。だからわしはお前を見限(みき)った。適当な子とお前を交換した。そしてお前は『新沼慎次』となった」


「……」


「そして十年前、お前が新城家に引き取られた。そこでは平和に暮らしていたが、お主はその生活を拒み続けた。他人とも距離をとり一人を望んだ。違うか?慎次?」


「うるせえ!慎次慎次ってよ!お前は一体誰なんだよ!?」


 老人は口元を緩め、