「すいませんがここがサイエンスカンパニーで間違いないでしょうか?」


 老人は右手で顎を触りながら、


「ああ。ここがサイエンスカンパニーじゃ」


 そう言って緑の芝生(しばふ)を指した。


「僕はここに会社が建っているとは思いませんが……」


「お前は部外者(ぶがいしゃ)だからな。ある装置を使ってじゃないと建物は見えないぞ」


「やっぱりそうなんですか!?」


 慎次は驚き、老人は高(たか)笑(わら)いをする。


「坊主!最近の科学は二十一世紀を迎えてからこちら、加速度的(かそくどてき)に進歩しておる。お主もその波に乗り遅るなかれ!」


 慎次は老人の言葉に圧倒(あっとう)されていた。これが今勢いに乗っているサイエンスカンパニーなのか。自分が大人になって成功すれば、有名になれば今の老人みたいになれるのだろうか。


「坊主はどうしてここに来た?手に持っているのは、あの忌々しい記事ではないか。坊主はこの歳でもう野次(やじ)馬(うま)に目覚めたか?それならばなにも答えんぞ」


 慎次は何も言えなくなった。この老人が言っていることが本当だからだ。


 黙り込んでしまった慎次を見て老人は肩をすくめ、


「まあ。お前さんの歳でここまで一人で来た度胸(どきょう)は買おう――一つだけ質問していいぞ」


 慎次は顔をあげてすぐさま質問をした。


 この質問で一気に展開が変わることも知らずに。