「俺だって自分が何者か知りたい。出来れば本人に合ってこの話が聞きたい」


「そう……私にあなたを止める権利は無いから、あなたの気が済むまで調べなさい。でも……」


「でも?」


「決して無茶はしないで?今の体はあなただけのものじゃないことを肝(きも)に銘(めい)じておいてね」


 慎次は頷いて自分の部屋に戻って行った。麻耶が彼は夕飯を食べていないことに気づいて、階段から慎次を呼ぶ。


「ちょっと!夕飯はどうするの!?」


 帰ってきたのは無言の時間だけ。麻耶は呆れてリビングに戻り溜め息をつく。玲菜は微笑(ほほえ)んで、


「あの子は意外と周りを見ているわね。最初の乱暴な性格はおそらく自分の体を手に入れて興奮してしまっただけのようね」


「でも、母さん……」


 麻耶は心配そうな顔をするが、玲菜が彼女の頭を撫でる。


「心配しないの。あの子なら意外としっかりしているわ。きっと……ね」


『彼とあの人を会わせるのは危険じゃない?』そう言うはずだったが、麻耶は結局言えずじまいだった。