慎次が目を覚ますとすでに時刻は七時を過ぎていた。もう二人は帰ってきている。すぐに起きて下のリビングに降りると二人が難しい顔をして座っていた。目の前には夕食が湯気を出している。二人は一向に食べる様子がない。慎次は恐る恐る二人に近づく。


「ど、どうしたの?二人とも難しい顔をして。もしかして僕の問題?」


「当たり前でしょ!」


 麻耶がテーブルを思い切り叩く。味噌汁(みそしる)が零れ、慎次は驚く。麻耶も怒ることはほとんどないため怒った時はものすごく怖い。玲菜がため息をついて味噌汁をかき混ぜる。


「あなたの人格の説明が出来ないのよ。どうしても矛盾(むじゅん)が出てしまう。元々二重人格者の人格が急変することはないのだけれども……」


 玲菜がゆっくり味噌汁を啜る。


「そうなると、やっぱりあれが関わってるとしか……」


 麻耶がそう言うと、玲菜はお椀を置いて、


「そうね……。あまり考えたくはないけど、常識をもってしても通用しないとなると、そっちの考えの方が濃厚(のうこう)ね」


 慎次が気になるのは麻耶たちが言っている『あれ』の意味だった。


「ねえ。さっきから言っているあれとかそれって何?」


 慎次の発言に玲菜が一度だけ慎次の方を見た。