家に帰った慎次は自分の部屋で健吾からもらったサイエンスカンパニーの記事を見ていた。


 記事によれば、サイエンスカンパニーは三十年程前に聖(ひじり)鉄(てっ)斎(さい)の手によって作られた。


最初こそは弱(じゃく)小企業(しょうきぎょう)ではあったが新科学(しんかがく)技術(ぎじゅつ)を背景に急成長(きゅうせいちょう)を遂(と)げる。
新科学技術は主に血液(けつえき)がメインで、拒絶(きょぜつ)反応(はんのう)を起こさずに血の相互(そうご)入れ替えを成功させたり、電気(でんき)信号(しんごう)や物を介(かい)して人格の操作を行うなどの技術でたびたび注目を浴びている。
しかし裏では血を使った化学テロを企(くわだ)てようとしている。政府・警察は早急にこの会社を捜索(そうさく)すべきとのことだった。


 インターネットでも、サイエンスカンパニーは悪魔の巣窟(そうくつ)。日本を死の国に変えようとしている!といった物騒(ぶっそう)な情報ばかりだった。
 

しかし、サイエンスカンパニーの住所は意外にも近所であることに気づいた。慎次はもう一人の方にも話しかけてみるが、
 

返ってこない。少しばかり疲れているのだろうか。昨日出会っていきなり体を支配され、戻ってきたと思ったら再び現れて健吾を倒したのだから相当きつかったのだろう。


 慎次本人にも睡魔(すいま)がやってきた。どうやら体力の方は二人で共有しているみたいだ。
慎次は吸い込まれるように自分のベッドで横になった。もう一人の人格がいた黒いダー
ツの矢。果たしてもう一人の人格とサイエンスコーポレーションにはどういう関係があるのだろうか。


慎次は結論を得ることなく眠りについた。