そう叫んで慎次のすねを蹴る。もう一人の慎次は痛がる。美佳がすぐに女の子を止める。美佳が叱(しか)ると女の子は泣いてしまった。


「ごめんね。この子はあんたの妹の麗佳(れいか)。もう小学一年生だよ」


「俺の妹……」


「私は慎次を助けることは出来なかった。健吾は慎次が生まれる前までは私が暴力(ぼうりょく)を受けていた。すごく怖かった。だから見ているしか出来なかった!ごめんね。慎次……」


 慎次は泣いている美佳を見ることしかできなかった。麗佳はそれを見て再び慎次を攻撃しそうになったが、美佳が止める。麗佳が理由を聞くと、


「それはこの人が麗佳のお兄ちゃんだからだよ。久し振りに会えて嬉しいの」


 麗佳が不思議そうな眼で慎次を見上げる。


「おにーちゃんが、れいかのおにーちゃん?」


 慎次は少し困った表情をして、


「あ、ああ……。俺が君のお兄ちゃんだ。会ったら声か掛(か)けてくれよ」


「うん!れいか、おにーちゃんとなかよくする!」


 満面(まんめん)の笑みで慎次を見つめる。


 慎次はそれをただ見ていることしか出来なかった。