ひろは床の上じゃなくベッドにあたしを運んだ。




「本間に入れていいの?」


ひろは財布に入れていたコンドームを一枚出した。
お金が貯まるとかいうジンクスだったけど..友達の誰かが入れたらしい。


「ひろの好きにしていいよ。」




本当は怖かったけど
嫌じゃなかった。

ひろの初めては
全部あたしとじゃなきゃ
嫌だったから。



"今しか無いの"



ひろはあたしの目を見ながら
"本当にいい?"
何回も聞いてきた。

後悔なんてしない。


今しか無いんだから...


ひろはゆっくりあたしの身体に入ってきた。



「――――ッん」

「痛い?」

「大丈夫。」

本当は痛かったけど
胸の痛みに比べれば
痛くなかった。



"初めてはひろが良い"

ずっと思ってたことだった。
他の誰でもない
ひろじゃなきゃ嫌だった。



でもなぜかすごく悲しかった。


もっとひろを見ていたいのに
もっと肌を感じていたいのに



初めてなのに...


ずっとひろの部屋の
天井の模様を眺めてた。





動くたびにあたしはひろの背中に爪を立てる。


揺れるたびに顔にかかったひろの前髪が愛しい。



それでも天井を見つめながら
胸の痛みと身体の痛みに耐えた。



分からないように
泣いた。





"俺は宵のこと前みたいに好きじゃない。今は梨香の方が大切やねん"




聞き流していたけれど
平気じゃなかったよ。



息が出来ないくらい
苦しくて..
傷ついて..


でもどうしようもないでしょ?

ひろはあたしに諦め方を
教えてくれないから。



「ん...。」


甘い吐息に混じって涙を流す。


ひろは気付かないよ。
あたしの身体に夢中だから..



「あっ....___」


またひろの背中に爪を立てる。
痛みに耐えながらも
ひろの身体の香りが愛しくて仕方なかった。