"ひろくん彼女出来たんだって"
愛はうつむく。
それから目に溜めていた涙を
ポロポロとグラウンドの土に落とした。
まるで
自分のことみたいに泣く愛を見て
本当に自分を見ている気持ちになったけれど
愛の言った言葉が
素直にあたしの心には入って来ないみたいだった。
拒否するみたいに...
「ちょっと愛!!泣かないでよっ」
「ごめん」
そっか。
それで愛はずっと様子が
おかしかったんだ。
泣いちゃうくらい
あたしのために悲しんでくれてたんだね。
「愛。ありがとう。教室もどろう」
「うん」
校舎に戻る途中
あたしは愛とはぐれて教室には戻らなかった。
「あ~涙出る」
一人になりたくて
まだ泣いちゃいけないのに
涙が勝手に溢れてきて
あたしは泣きながら長い廊下を早足で歩いた。
ポロポロ
ポロポロ
ポロポロ
止まらない。
やっと見つけた場所は
トイレだった。
気持ちの整理がつくまで
考えて納得するまで
泣けばいい。
そう思っていたのに
止まらないね。
諦め方も解らない。
忘れ方も解らない。
もう
どうしようもない。