「ずっと家に居るより楽だよっ」

「ありがとうね」


そのまま無表情で
フェンス越しにサッカーの試合をみていると
グラウンドのずっと向こうに野球部が見えた。


そこには大輔が居た。

「あ..大輔。」

「え?どこ?」

「あっちのグラウンド..」

「ほんとだ...やっぱり帰る?」

「大丈夫っ」


あたしはフェンスのずっと向こうの大輔をずっと見ていた。


「気づいてるかな?」

「う~ん..大輔くんずっとこっち振り返ってみてるよ?」

「え‐..」

「モテるじゃん」


試合が終わるころになると
もう雨は止んでいた。
野球部もサッカー部も
グラウンドの整備に入っていてあたしたちも帰ろうとしていたところだった。


「あっ愛ちゃん!!」

愛の名前を呼んだのは
圭太くんだった。

「あのさ..大輔が..大沢さんに話があるから貸してくれないかって..」

「え?宵に?」

「うん。」

「愛ちゃんは俺が家まで送るから♪」

「ほんとに‐?」

愛の目が輝いてる。
そして同時にあたしの顔を覗きこんだ。

「はいはい♪いいよ!!先に圭太くんと帰ってて」


「宵♪ありがと!!」
愛が小声でいった。


「えっと大沢さん...大輔が校門に居て欲しいって言ってたよ」

「うん..ありがとう」

そう言って
愛と圭太くんは仲良さそうに帰って行ってしまった。


本当は大輔を待つ気なんてまったくなかった。
適当に行って帰ってしまうつもりだった。

これ以上話なんてしたくない。
今はもう傷付きたくなくて
避けようとしていた。

一人で逃げるように
歩きだした。


なのに...


「宵ちゃん!!!」


大輔は
自転車も無くて歩いて帰るあたしを探して追いかけて来たんだ。