大輔とあたしが寄りを戻したことは
すぐに広まった。

ひろの耳には
もっと詳しく入っていたと思う。
だって大輔とは
もう親友ってくらい仲良しだったから。
大輔からもよくひろの名前を聞かされたけど
あんまり知らないふりをした。

そんな平穏な日が続いた時に
事件は起きた。

あたしが早く家に帰ると
朝から祖父が
酒を飲んで酔っぱらっていた。

あたしの顔を見るなり

"目障りじゃ"

と言った。

あたしが無視して部屋に戻ろうとすると
祖父は近くにあったビール瓶をあたしに向かって投げた。

瓶はあたしの足元に見事に命中してしまった。

血が沢山でてきて
恐くなった。

あたしは悲鳴をあげた。

すると自宅で仕事をしていた父が出てきて
あたしをかばってくれた。
無口な父は
何もいわずあたしを部屋に運んだ。

「ごめんな。ごめんな。」

父はあたしにずっと謝っていた。

それから沢山話をしてくれた。
祖父は昔から
父によく虐待を繰り返していた。
でもそれは酒を飲んだ時だけで父も何も言えなかった。

学校でもらったリコーダーは折られたり、殴られたり、おもちゃも壊されたりしたらしい。
祖母も恐くて何も言えなくなったと言った。

あたしの足の手当てをしながら父は情けないと
少し涙目だった。

それから真剣に言った。

「家を出よう」

「え?」

「やっぱり母さんも同居は嫌がっていたし。家を出よう。おまえの為にも...」

「うん。」

話はすぐに決まった。
母もすぐに了解をして
あたし達は引っ越す事にした。

学校は
遠くならないようにと
区域内のマンションに引っ越すことになった。


お父さんは
ちゃんとあたしのこと
大事にしていてくれた。

それだけが嬉しかった。