メールを頻繁にするようになって
ひとりの野球部の男の子から
呼び出しをされた。

「俺。よいチャンのこと好きやから..付き合って?」

「別にいいよ」

"別にいいよ"
そんな言葉くらいしか
返事の仕様がなかった。

あたしが返事をした瞬間
掃除箱に隠れていた先輩が
はしゃぎながら出てきた。

「おっしゃ~!!大輔!!おめでとう」

「ありがとうございますっ」

目の前ではしゃぐ先輩達。

あたしは
さよならと一言残して
先に帰った。

返事をしたものの
やはり付き合うとなると
変な感じがした。

でも心の中のほとんどは
ひろの顔と
どうでもいい気持ちでいっぱいだった。


「はぁ~。めんどくさいかも」

あたしはすでに
別れたくなっていた。
でも
何か変わるかもしれないと
少しの期待にかけてみた。


はじめての彼氏は
"大輔"
名字は知らなかった。

帰ってからメールをして
たまに電話もして
時々好きと言われたけれど
何も感じなかった。


それから何度かメールをして
はじめてふたりで会う約束をした。


あたしと大輔が付き合った事は
あたしから言わなくても
みんな知っていた。

きっとひろにも伝わっている。

それでよかった。
ひろが知ったら..
少しはあたしのこと
気にしてくれると思った。


♪~♪~っ

大輔からの電話だった。

「もしもし?よいチャン?」

「うんっどうしたの~?」

「明日会おうって言ってたやん!!俺明日クラブなくなったから一緒に帰ろう?」

「そ~なんだぁ。別にいいよっ」

「ほんまに~じゃぁ明日楽しみにしてる☆」

「うん」

「好きやで。じゃあ明日☆」

「うん。ばいば~い」

ピッ。


「"好きやで"っかぁ~。最近よく言ってくるなぁ..」

あたしは
大輔の気持ちが重たく感じた。
それから罪悪感も感じた。

あたしは大輔のこと
好きじゃない。

はっきりわかっていた。