「...ごめんね。ひろすっごく困った顔してるよ」
「....え?」
「やっと動いたぁ」
「固まってた?」
「うん。」
「もしかして梨香ちゃんのこと考えてた?」
「...それは考えてなかった」
「そう。」
「宵のこと考えてた。」
「え?」
「俺は宵のこと心配してるから」
「ありがとう...」
それからひろは何も話さないままあたしを家の前まで送ってくれた。
「なぁ...。宵?」
「何?」
「俺のこと本間に好きなんか?」
「...さぁ?わかってるくせに」
あたしは少し微笑んでみせた。
「好きなんやったら...別にキスしてもいいで。」
「は?何ゆうてるの?」
「キスしてもいいで。」
「なんで?」
「宵が俺のこと好きやから..」
「同情やん。」
「...違う」
「じゃぁ何よ?」
「わからん。」
あたしはひろに近づいて
もう一度聞いた。
「あたしのこと心配?」
「うん。心配する」
「ありがとう。」
それだけ聞けて
あたしは充分だった。
本当はもっと欲しいけど
充分だった。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
ひろの心配は
もしかしたらあたしが幼なじみだからなのかも知れない。
心配して
同情したのかもしれない
でも それだけで嬉しかった
今はこれで充分だった。