あたしは立ち上がってひろの正面に座った。


「あたし...彼女が居てもひろが好き。」

「...。」

「なんか言ってよ」

「........うん。」



ひろは黙ったままあたしの目をじっと見つめていた。
あたしはいつもこの目に吸い込まれてしまう。
抜け出せなくなってしまう。

だからどうしても
諦められない。



ずるしてでも
ひろが欲しい。



「キスしていい?」

「....駄目」

「梨香ちゃんが居るから?」

「....うん。」

「居なかったらいいの?」

「.....わからん」



「本当に駄目?」

「....。」


ひろの馬鹿。
本当に嫌だったら
もっと避けてよ。

そんな目で見つめないでよ。

もっとあたしのこと
突き放してしまえばいいのに。







「嫌やったら避けてもいいよ」



そう言ってあたしは
ゆっくりひろの頬にキスをした。


ひろは避けたりなんかしなかった。




「...びっくりした?」

「...。」




ひろの顔は表情を代えないまま
あたしの手を握った。



「本当にキスするよ?」


そして次はゆっくり唇に近づいた。
でも、もう少しと言うところであたしは動きを止めた。