楽しかった修学旅行も
終わりがくる。

あたしは帰りのバスの中で
ぐっすり寝ていた。


他のみんなも盛り上がりすぎて疲れたのか寝息を立てて寝ている。


そして偶然にもあたしの座席の後ろにはひろがいた。


あたしは何度か起きて後ろを振り返り、ひろの寝顔を盗み見ていた。


それだけで幸せな気持ちになれた。



地元にバスが到着すると
みんな大きな荷物を抱えて外に出た。


ひろは思っていた通り
梨香ちゃんのクラスのバスまで荷物を持ちに行ってしまった。


「はぁ~ぁ」


わかっていても溜め息が出る。


他の子達もみんな親が車で迎えに来てくれていた。
あたりまえだけどあたしの親は居るはずもなかった。


「宵~?」

「何ぃ?」

愛が話しかけてきた。

「あたしの親迎えに来てるから車乗って帰りなよ?」

「え...いいよ。」

「でも乗ってきなよ?」

「いい。本当に大丈夫だから」

「わかったぁ。ばいばい」




あたしは"親"と言う存在が
苦手だった。

どう接すればいいのか分からなくて...

他の親が羨ましくなってしまって...


なんとなく嫌だった。


「さぁ~帰ろっと。」


あたしは重い荷物を持って一人で歩き始めた。



「帰るの嫌だな~」


どうせ帰っても
おかえりなんていってくれない。
父も母もきっと仕事で疲れて寝てしまっている。



いつも思う。
本当は帰りを待っていて欲しい。
それから沢山土産話なんかも聞かせてあげて、家族みんなでひとつの話題で盛り上がってみたい...。

そんなこともう何年してないだろう?