5年前のある日、あたしは病院のベッドで目が覚めた。


あたしは何がなんだか訳が分からず、顔だけを動かして周りを見回した。


そのすぐ傍には男の人、二人組があたしを憐れむように見下ろしていた。


その人達は刑事で、あたしが殺人事件の現場に血まみれで倒れていたと告げた。

そして、その時にあたしの家族が殺された事もその口から聞かされた。


けど、その時の記憶が一切ない。


医者によると、家族を失ったショックが大きすぎて、記憶障害を起こしたのだと言う。


それを聞いた時、あたしは心にぽっかりと穴が開いたような空しさを感じた。


病院から退院した後も、行き先は無く、お父さん達が貯めていた貯金を使って一人で暮らし始めた。


だが、その暮らしに堪えきれず、死のうと本気で思ったこともあった。



けど、"ある人"に出会い、あたしは二度とそんなことを考えないと誓った。




『生きろ』




そう言ってくれたその日から──







あたしは飛び出すように家を出る。

学校までの通学路は木がいっぱい生い茂っているいわゆる森。


田舎に住んでるあたしには、ありふれた光景だ。
木漏れ日があたしの前の道を照らしだす。


本当なら生徒がちょこちょこ歩いているけど、今はあたししか通ってる人がいない。

あたしは息を弾ませ、その道を駆け抜ける。



「はぁ…はぁ…」

一旦走るのを止めて、あたしは膝に手をついて息を整える。



すると、



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