長い間過ごしてきた人売り場を後にした俺は、男に馬車の荷物置き場みたいな所に押し込まれた。


「ここにしばらくじっとしてろ。言っとくが、逃げるなんてこと考えても無駄だからな」


男は妖しい笑みを浮かべたあと、馬車の扉を乱暴に閉めた。


中は薄暗く、荷物が多すぎて座るのがぎりぎりな広さやった。


俺は膝を抱えると、古びた床をじっと見つめた。


俺はどこに連れて行かれるんやろう?



馬車に揺られ、何度も頭の中でその言葉を意味もなく繰り返した。



そうこうしてるうちに、目的地に着いたんか、馬車の揺れが治まった。


馬車の扉に視線を向けると、扉が勢いよく開かれた。


太陽の光が俺の視界に入り、目を細める。


「着いたぞ。もたもたすんな」