万引きGメンとし子物語【短編19ページ】


そして、スーパーマーケットシカクキョウに万引きGメンはやってきた。

彼女の名前はとし子39歳。

メガネで髪型は耳だしショート襟足ながめ。

服装はジミでふつうのおばちゃんだ。

店内に入ってみると、そこまで広くなく、いたってふつうのスーパーで平日でもお客様が多い。

とし子は事務所へ向かった。



「はじめまして、万引きGメンとし子です」
とし子は少し緊張していた。

「あぁよろしくたのむよ。最近は高齢者の万引きがスゴく増えすぎて困っているんだ。これも年金を減らされたせいで食べ物を買うお金がほとんどない人もいるらしい。何がわるいかと言えば、年金を減らした国が悪いと思うんだけど」

店長はちょっとイケメンで優しそうな人で少しだけキュンとなったとし子だった。またその逆に店長はおばちゃんのとし子をみて少しがっかりした。若い子がよかったらしい。

「こちらこそよろしくお願いします」


「きいているよ。とし子さん。かなりの凄腕らしいね。期待しているから」

「うふふ。そんなことないですよ。ただ私は万引きが許せないだけです」

「とし子さん。スーパーマーケットシカクキョウを守ってくれ。たのんだよ」

「はい。まかせてください」



ふつうのおばちゃんの格好で、買い物カゴにはトマト、ごぼう、長ネギ、これがとし子のプロとしてのスタイル。絶対に万引きGメンということがばれない。
まさにプロ根性。


「あの人あやしいわ」

とし子の感は鋭い、研ぎ澄まされている。

70代の男だ。
手には、ソミーのアルカリ乾電池が握られている。

男はキョロキョロと落ち着きがない。

間違いなく万引きするきだ。


男がソミーのアルカリ乾電池をポケットに入れようとしたその時!

「♪チンチロリ〜ンチンコロリ〜ン♪」

とし子はハッとして驚いた。

携帯電話をマナーモードにすることを忘れていたのだ。
あわててマナーモードに切り替えた。

シャープボタン長押し。

「よし。これでいいわ。あらいけないわ。男が見当たらないわ」

とし子は男を見失ってしまった。



そういえば、さっきの電話だれかしら〜気になるわ。

とし子は着信履歴を見た。

「あや子!!」

とし子は驚いて思わず叫んでしまった。

あや子はとし子と同じ万引きGメンだ。万引きGメン国家資格養成学校で、とし子とクラスが同じだった。宿命のライバルでもある。
そして万引きGメン国家資格養成学校を卒業して、とし子は関東へ、あや子は関西へ派遣された。


私に何のようかしら。

とし子は迷いつつ、あや子に電話することにした。


『プルルルルル〜プルルルルル〜ピッ!ほんにひさしゅうにゃあや。とし子!』

「あや子!私にいったい何のようなのよ!」

『あんさん。なんばそうカリカリしてはんのや。仕事の調子はどないねん?』

「あなたには関係ないわ」

『あたい。ついに、90%になったんやスゴかろが』


「きゅうじゅっぱあせんと!!」

とし子はおどろいた。

説明しよう。あや子の言う90%とは逮捕率みたいなもので90%の残り10%は誤認逮捕のことだ。つまりあや子は10人に1人は万引きをしていない人を間違えて逮捕してしまうことになる。お客様から物凄く怒られる。これも万引きGメンの運命(さだめ)なのだ。ちなみにとし子は82%。

『めっちゃおどろいてるやんとし子。ところでまんねん今どこで働いてまんのや?』

「スーパーマーケットシカクキョウで働いているわ」

『ふ〜ん。あたいはジョスコで働いてんねん』

「ジョスコ!!すごいじゃない」

とし子はおどろいた。

説明しよう。ジョスコとは日本最大級の総合ショッピングセンターであらゆるものがそろっており庶民に大人気の定番スポットで万引きも多く、全国から一流の万引きGメンが集まる場所だ。