「わかりました。本当にすみません。」





帰り…


後ろから声がかかる。



「おい!もうかえんの?一緒帰ろうぜ。」


「あっはい。」


「…何で熊本かえんの?仕事…したくなくなった?」

「いえっそんなことないです。」



私は迷ったが、総には私の事を知ってほしかった。


だから帰り道、ママの事、パパの事、家族への思いを伝えた。
「なるほどね。そんで熊本に帰ることにしたんだ。」

総は優しく微笑みながらうなづいていた。


「はい。本当にすみません。」


「いいんじゃね?代わりは誰かいるだろうし、家族は大切にしなきゃな。」


私は総がどういうつもりで言っているのかわからなかった…

心配して言ってくれているのか…代わりなんているからお前なんかさっさと帰っちゃえば?


…。どっちなんだろう…





それから私は社長に報告し、




私は熊本にかえった。
ヘアメイクの心。


最近よく話すようになった。


家が同じ方向だから一緒に帰る事が多かったかなかな?


最初は全くもって会話もなかった。


でも慎に聞いた。



心が熊本にいるときからめちゃめちゃ俺のファンだって事…。
でもアイツまったく俺に興味があるようには見えない…。


慎のウソか?


ある日家が同じ方向だと聞いたから一緒に帰ろうかと声をかけたとき、

アイツは避けるように1人でさっさと帰っていった…。



本当に俺のファンなのか!?
でもある日俺は気づいた。

アイツは芸能人である俺に迷惑がかからないようにわざと避けるようにしていたんだ。


一般人の自分と並んで歩いてるのが誰かに見られたり、写真なんて撮られでもしたら…と心配したんだろう。


今まで知り合った女にそんなやつはいなかった。


自分の事しか考えずにベタベタしてくる奴ばっかだった。
やっと一緒に帰った日、アイツは自分の故郷の事や家族の事をめちゃめちゃ優しい顔して話してた。


俺は人の話を黙って聞くのは得意ではない。


絶対途中で突っ込んじゃうし、自分もしゃべりたくてうずうずしちまう。(笑)



でもアイツは違った。


もっと聞きたい…ずっと話を聞いていても全く苦にならないんだ。


なんでだろう…。
それから俺はちょくちょく一緒に帰ろうと誘うようになった。


でもアイツはまだ気を使ってる。


一緒に帰る時も距離を置いてる。


アイツなりに考えてそうしているんだろう…


細かい気遣いができるんだなって感心した。



ちょっとづづ俺…アイツが気になるようになってる…!?


こんな気持ちは初めてだった。


仕事場ではアイツはいつも笑顔だった。


現場を盛り上げようとよく冗談も言うし、バカばっかりしてる。


でもそれだけじゃない。


俺にはそれ以外のものが段々見えてくるようになった。